グループ紹介

乳腺グループ

対象疾患

乳房悪性腫瘍(乳がん)、乳房良性腫瘍、乳腺炎症性疾患、女性化乳房など

 

手術症例数(過去5年間)

※横にスクロールして、確認できます。

  2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
全手術症例 39 40 39 48 41 44 71
乳房部分切除(温存手術) 11 13 19 17 15 18 26
乳房全切除(全摘手術) 28 26 19 30 24 32 43
その他 1 1 1 1 1 4 2
一次再建手術症例 6 4 0 1 2 3 4
人工物 4 0 0 0 1 2 3
自家組織 2 4 0 1 1 1 1
内視鏡手術 17 10 12 12 14 11 15
転移・再発症例数* 14 8 13 12 12 13 18

※新規に紹介となった症例のみ

 

乳腺グループの概要

日本では乳がん患者が増加しており、現在、年間約9万人が罹患し、生涯では11人に1人の女性が罹患すると言われています。また、年間1万4000人以上が乳がんで亡くなっています。女性の癌患者では、罹患数第1位、死亡数第5位という状況ですが、早期発見と適切な治療により、良好な予後が期待できます。残念ながら手術後に再発した場合や、治療開始時に転移がある場合にも、適切な治療を行うことで、生活の質を落とすことなく、治療が可能となってきています。

 

乳がんと診断され、転移がない場合に最初に受ける治療を「初期治療」と呼びます。初期治療は手術を中心に放射線治療や全身薬物療法(ホルモン剤や抗癌剤)を含みます。また、診断時に転移がある場合や再発してしまった場合の治療を「進行・再発治療」と呼びます。治療の中心は全身薬物療法(ホルモン剤や抗癌剤)となります。
以上のように、乳がん治療は多岐にわたります。そのため、乳腺外科医だけではなく、形成外科医、放射線科医、乳がん看護認定看護師や緩和ケア認定看護師などと連携をとりながら、患者さま各々に合った治療方法を行います。

 

乳腺グループの疾患

初期治療

近年、乳がんの手術は根治性を損なうことなく、整容性にも配慮した手術を行うことが重要となっています。整容性を考慮した乳がん手術をオンコプラスティックサージャリーと呼びます。
以前は拡大手術(乳房全摘に加え、大胸筋の切除や拡大リンパ節郭清)が標準手術と考えられた時代もありますが、拡大手術をしなくても生存率に差がないことがわかり、手術は縮小されてきています。そのため、大胸筋など筋肉を温存した乳房全切除術(全摘手術)(図1)から、さらに手術を縮小した乳房温存手術(部分切除)(図2)を行うことも多くなりました。

ただし、最近では、全摘手術も再度増えてきています(図3)。その理由ですが、温存手術後の局所再発を懸念する場合や温存手術が適応できない場合などに乳房全摘を行い、同時に乳房再建手術を行うようになってきたためです。再建手術は形成外科との連携が必要ですが、当院は県内で最も常勤形成外科医が多く、人工物(シリコンインプラント:図4)による再建だけではなく、自家組織(広背筋または腹部の脂肪:図5、図6)を用いた再建手術も積極的に行っています。
もちろん、病状によっては再建手術をおすすめできないこともありますが、再建手術が再発や生存率に影響するという報告はみられないため、患者さまの希望を最大限考慮し、年齢に関係なく、手術方法を決定しています。

また、当科では小さな傷で、皮膚の損傷を限りなく小さくするために乳房手術にも内視鏡手術を導入しています。この内視鏡手術もオンコプラスティックサージャリーの一つと考えています。進行具合にもよりますが、腋の小さな傷と乳輪周囲の切開で手術を行うため、術後も目立ちにくい傷になります(図2)。

 

図1:右乳房全切除症例。乳頭・乳輪は切除し、乳房はなくなる。

【図1】
右乳房全切除症例。乳頭・乳輪は切除し、乳房はなくなる。

図2:右部分切除症例。腋と乳輪の周りの皮膚切開。切除の痕はほとんど目立たない。

【図2】
右部分切除症例。腋と乳輪の周りの皮膚切開。切除の痕はほとんど目立たない。

乳がん手術法

【図3】

内視鏡補助下に手術した乳頭温存乳房全切除症例(左乳癌)。人工物(シリコンインプラント)による再建後。傷は乳輪の周りと腋の小さな傷のみ。

【図4】
内視鏡補助下に手術した乳頭温存乳房全切除症例(左乳癌)。人工物(シリコンインプラント)による再建後。傷は乳輪の周りと腋の小さな傷のみ。

広背筋皮弁による再建症例(左乳癌)。腋と背中に傷は残るが、前から見ると目立たない。

【図5】広背筋皮弁による再建症例(左乳癌)。腋と背中に傷は残るが、前から見ると目立たない。

腹部脂肪を使用した再建症例(左乳癌)。もともと腹部手術歴があるが、手術を工夫することで再建可能。ただし、術後は腹部に横切開の手術痕が残る。

【図6】
腹部脂肪を使用した再建症例(左乳癌)。もともと腹部手術歴があるが、手術を工夫することで再建可能。ただし、術後は腹部に横切開の手術痕が残る。

 

乳がんの治療はいわゆる超早期(しこりのない状態)を除き、手術のみで治療が完了することはなく、術後または術前に全身薬物療法(ホルモン剤や抗癌剤)が必要となる場合がほとんどです。さらに、乳房温存手術の場合には放射線療法も必要となります。乳がん治療ガイドラインに沿った標準治療を基準として治療を行っていきます。

 

進行・再発治療

初回受診時にすでに転移がある場合や再発してしまった患者さまは、根治手術を行うことはできません。治療の中心は全身薬物療法(ホルモン剤や抗癌剤)となります。「根治切除ができない」=「完治できない」ということになります。つまり、治療は広い意味では「延命治療」となります。治療は乳がん診療ガイドラインに基づく、標準治療を行うことになりますが、患者さまそれぞれの社会背景や生活環境、希望に沿って、生活の質を落とさないような治療を行うことを心がけています。

 

患者様へのメッセージ

乳がんは他のがんと比較し、長期にわたる治療/経過観察が必要となります。
また、治療方法も多岐にわたります。手術のみを考えても、乳房を全摘するのか、温存するのか、全摘の場合は再建手術をするのかどうかなど、選択肢も多数あります。そのため、患者さまそれぞれの希望を考慮しながら、それぞれに合った最善の治療を一緒に考えていきましょう。

 

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