患者の皆様へ

内視鏡外科手術について

腹腔鏡手術の歴史

従来、消化器疾患に対する腹部手術は、臓器の場所に応じて大きく腹部を切開して行われてきました。1987年 フランスの開業医フィリップ・ムレ博士(Philippe Mouret, M.D.)が、以前より診断目的で使われていた腹腔鏡を治療に応用して行った腹腔鏡下胆嚢摘出術が腹腔鏡手術の始まりといわれています。その後、1988年 デュボワ博士(Dr. François Dubois)、ペリサ博士(Dr.Jacques Périssat)によって同じく腹腔鏡下胆嚢摘出術が成功し、これが論文として報告されたようです。 この腹腔鏡下胆嚢摘出術は、小さい傷で手術が行えること、術後の疼痛が少なく回復が早いことから急速に世界的に普及しました。日本でも1990年に導入され、現在では胆石症に対する標準術式になっています。その後、腹腔鏡下手術に用いる医療機器の進歩と外科医の技術の向上により、次第にその対象臓器、適応疾患が広がり、健康保険も適用されるようになっています。

 

腹腔鏡手術のメリット

腹腔鏡手術は、5mm~1cm程度の皮膚切開を4~5ヵ所作り、直径約1cm程度の腹腔鏡(図1)と呼ばれる筒状の内視鏡(カメラ)を穴から腹腔内に挿入し、二酸化炭素をいれて腹腔内に空間を作り、モニター上に映し出された腹腔内の様子を見ながら、マジックハンドのような医療器械(鉗子:図2)を挿入し手術を行います。
したがって、メスで大きな開腹創を作る従来の手術方法と違い、以下のようなメリットがあげられます。

図1. 腹腔鏡

図1. 腹腔鏡

図2. 腹腔鏡手術に使用する鉗子類の一部

図2. 腹腔鏡手術に使用する鉗子類の一部

 

傷が小さい

痛みが軽い

体への負担が少ない

術後回復が早く、退院が早い

早期に日常生活に復帰が可能

腸閉塞になりにくい

 

最大の特徴は、皮膚切開が小さいことです。この傷は、術後ほとんどわからなくなり、退院後温泉に行かれても手術を受けたことを話さないと全くわからないほどです。また術後の痛みが軽く、腹腔内が外気にさらされないため、癒着も少なく術後の腸閉塞も起こしにくいことがわかっています。ほとんどの場合、術後翌日には、立位歩行や経口摂取が可能となります。

 

腹腔鏡手術の適応疾患

当科で腹腔鏡手術が可能な疾患として以下にあげるような疾患があげられます。
例外はありますが、現在、ほとんどの手術を腹腔鏡で治療可能です。

 

腹腔鏡手術が可能な疾患

胆石症、胆嚢炎、胆嚢ポリープ

大腸癌

胃癌

食道癌

肝臓癌

膵臓癌

虫垂炎

鼠径ヘルニア、腹壁ヘルニア

腸閉塞

その他

 

従来、胃癌や大腸癌などの悪性疾患に関しては、リンパ節郭清が不十分となるため、早期癌に限定して行われていましたが、腹腔鏡画質の向上や医療機器の進歩により、開腹手術と同等のリンパ節郭清が可能となり、進行癌にもその適応が広がっています。当院では、胃癌であればD2郭清(2群リンパ節までのリンパ節郭清)、大腸癌であればD3郭清(3群リンパ節までのリンパ節郭清)などの標準術式はもとより、合併切除が必要となるような高度進行症例に対しても、癌の根治性を損なわないと判断されれば積極的に腹腔鏡手術を行っています。また、従来は高難易度手術として腹腔鏡手術の適応から外れていた食道癌や肝臓癌、膵臓癌に対しても術式によっては腹腔鏡手術を導入しております。このように、当科で治療を行っていただく患者さんにおいては、癌の根治性を損なうことなく、体に優しい腹腔鏡手術を積極的に実施し、患者さんに満足いただいております。

 

もっと体に優しく、もっと精巧に

 

ページTOP